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2016年11月17日

  • ディレクターズノート

ディレクターズノート005
マジカル・ミステリー・ツアー アートを求めてさいたまを歩く。

 さあ、それでは街を歩きながら、さいたまトリエンナーレ2016のアートプロジェクトを紹介していこう。

 大きく見て、メインエリアを3つ設定しているから、それに従って歩いてみようか。まずは与野本町駅〜大宮駅周辺エリア、彩の国さいたま芸術劇場から。ここにはチェ・ジョンファの二つの作品が展示されている。《息をする花》と、市民参加のワークションプで作られた《ハッピー・ハッピー》。両方ともチェの代表的な作品だ。《息をする花》は空気を出し入れすることで息をするように開花を繰り返す真っ赤なハスの花で、さいたまトリエンナーレが開催される以前からさいたまのさまざまな場所を旅して回り、最後にここ、さいたま芸術劇場にやってきた。

 これらとは別に、今回チェは、さいたま市の最新鋭リサイクルセンターである桜環境センターを見学したとき、そのリサイクル技術に感銘を受け、ここから再製品化工程に送り出される圧縮ペットボトルのキューブで作品を作りたいと構想した。題して《サイタマンダラ》。ペットボトルのキューブでピラミッドやオベリスクを作る壮大なプランだったが、予算もあるし、結局は12個のキューブからなる直方体を桜環境センターに立ち上げた。

 《サイタマンダラ》はチェがよく口にする「美不美不二」、つまり美も不美も同じという考えを端的に表した作品だ。それに鋭いユーモアもある。使われたペットボトルはおよそ13万本。つまり、13万もの市民がこの作品に素材提供で参加したのだと彼は言う。「参加するトリエンナーレ」を標榜するさいたまトリエンナーレに、しれっとこんなプロジェクトを持ち込むチェの感覚が私は大好きだ。

 チェはこのペットボトルキューブの作品だけでなく、《息をする花》や《ハッピー・ハッピー》をも含め、今回、さいたまトリエンナーレで発表するすべてのプロジェクトを総称して《サイタマンダラ》と呼びたいのだと言っていた。確かにカラフルで楽しげな《ハッピー・ハッピー》も、最後は処理場に持ち込まれ、リサイクルの工程に回される。《サイタマンダラ》というタイトルには、そんな死と再生のサイクルを想起させる力がある。

 桜環境センターは少し離れた場所にあり、西浦和の駅から歩くと15分ほどかかる。武蔵浦和駅から無料の送迎バスも出ている。

 

 それでは与野本町の駅に戻り、大宮に向かおう。