コンセプト

ごあいさつ

さいたま市は、2001年5月1日、浦和市・大宮市・与野市の合併により、3市がそれまで育んできた、「文教都市浦和」、「鉄道のまち・商業都市大宮」、「芸術文化のまち与野」などの個性ある都市イメージや、「サッカー」、「うなぎ」、「盆栽」、「漫画」などの魅力ある文化を受け継いで、誕生しました。

2003年の指定都市移行、「城下町」等の歴史や「人形」等の文化を有する岩槻市との2005年の合併を経て、今や人口は127万人を超え、持続的に発展・成長し続ける大都市となってまいりました。

そして、さいたま市は、文化芸術が持つ力を活かし、「生き生きと心豊かに暮らせる文化芸術都市」を創造するため、2012年4月1日にさいたま市文化芸術都市創造条例を施行し、盆栽、漫画、人形、鉄道などの多様な歴史文化資源や文化芸術を活用した総合的な都市づくりを進めています。

今年は、さいたま市誕生15年という節目に当たります。

その節目に、「文化芸術都市さいたま市」の創造に向けた象徴的・中核的な事業として、「さいたまトリエンナーレ2016」を開催いたします。

テーマは「未来の発見!」。

127万人を超える市民が生活する「さいたま市」を舞台に、アートのための祭典ではなく、市民がアーティストとともに、自分たちの未来を探していく、「市民の想像力の祭典」にしたい。この開催テーマには、ディレクター芹沢高志氏による強い思いが込められています。

開催テーマ「未来の発見!」のもと、国内外で先進的な活動を展開するアーティストがさいたま市を訪問・滞在し、市民と交流しながら、市内各地でさまざまなアートプロジェクトを展開します。

私たちは、「さいたまトリエンナーレ2016」の開催が、さいたま発の先進的な都市文化「さいたま文化」の創造・発信、さいたま文化を支える「人材」の育成、さらにはさいたま文化を活かした「まち」の活性化につながり、さいたま市の未来、そして世界の人々の未来を切りひらくきっかけになるものと確信しています。

「さいたまトリエンナーレ2016」に多くの皆さまのご賛同とご協力を賜りますよう、よろしくお願い申し上げます。

さいたまトリエンナーレ実行委員会会長 清水勇人(さいたま市長)

さいたまトリエンナーレ実行委員会会長
清水勇人(さいたま市長)

ディレクターメッセージ「さいたまトリエンナーレ2016が目指すところ」

さいたまトリエンナーレ2016が目指すのは、2016年のさいたま市に、世界に開かれた創造と交流の現場をつくりだすことにほかなりません。

現代の日本社会は大きな転換期にあると言えるでしょう。
いや、日本だけではない。
世界的にこれまでの構造が激しく揺らぎはじめ、私たちには自分たちの未来が見えにくくなってきています。
だからこそ、今、私たちは想像の力を羽ばたかせ、誰かから与えられた一つの未来ではなく、自分たちが生きてゆく未来を、自分たち自身で、足元から見つめ直していくことが求められていると思うのです。

このような認識のもとに、私はさいたまトリエンナーレ2016のタイトルを「未来の発見!」としました。

現在では世界各地でビエンナーレ、トリエンナーレといった国際芸術祭が頻繁に開催されていますが、まちで展開する以上、それはまちに関わるすべての人々に開かれたものにしなければなりません。
まちとはただの建物や道路の集積ではなく、歴史や文化といった時間的な過程をも含めた、人々の営みの総体です。
その意味で、私はこのトリエンナーレを「ソフト・アーバニズム」=「柔らかな都市計画」と考えたい。
文化、芸術を核として、まちの営みに創造性を吹き込むための社会的な実験です。

もちろん祝祭空間の創出には力を入れますが、今回トリエンナーレでは、トリエンナーレ終了後も続くような創造的市民活動の芽をいかに多くつくりだすか、そしてその活動が持続的に展開できるような社会的な枠組みをいかにつくりだすか、そうした目には見えにくい地道な取り組みにも力を注いでいきたいと考えています。

アートは想像の力によって、現実のまた別の姿、もう一つの風景、置き去りにされた想い、消え入るような小さな叫び、ささやかな日々の喜び、思ってもいなかった可能性、そんなことを生き生きと、私たちの目の前に浮かび上がらせてくれるものです。
新たな目で過去、現在を見つめ、未来を夢見る。
さいたま市は人が生きる現場であり、日本を代表する「生活都市」です。
自発的な市民活動も盛んに展開されています。
いのちの未来を夢見るとき、こんなにも適切な場所はありません。

各アートプロジェクトでは、国内外で先進的な活動を展開するアーティストがさいたま市を訪れ、ここに滞在し、市民と交流し、制作のプロセスを共有して、この場所でしか構想し得ない作品をつくっていきます。
そしてここに生まれる交流と創造の現場において、市民一人ひとりがアーティストの優れた直観に触発されて、自分たちの生きていくこれからの未来を、それぞれに「発見」していくことになるのです。

さいたまトリエンナーレ2016 ディレクター 芹沢高志

さいたまトリエンナーレ2016
ディレクター 芹沢高志

1951年東京生まれ。
神戸大学理学部数学科、横浜国立大学工学部建築学科を卒業後、(株)リジオナル・プランニング・チームで生態学的土地利用計画の研究に従事。
89年にP3 art andenvi ronmentを開設。
帯広競馬場で開かれたとかち国際現代アート展『デメーテル』の総合ディレクター(2002年)、アサヒ・アート・フェスティバル事務局長(2003年~)、横浜トリエンナーレ2005キュレーター、別府現代芸術フェスティバル『混浴温泉世界』総合ディレクター(2009年、2012年、2015年)を歴任。

さいたまトリエンナーレ2016のコンセプト

さいたまトリエンナーレ2016は、「ソフト・アーバニズム(柔らかな都市計画)」という概念のもと、文化、芸術を核として、まちの営みに創造性を吹き込むための実験的な取り組みとして開催します。

さいたま市の「場所性」にこだわります。

127万を超える人々が日々の生活を送るさいたま市において、それぞれ特徴の異なる3つの地域を主要エリアに設定し、場所性を生かしたプロジェクトを展開します。
中核となる<アートプロジェクト>では、国内外で先進的な活動を展開するアーティストたちが市内に滞在し、「未来の発見!」というテーマのもと、この場所でしか構想し得ないプロジェクトを生み出します。

「共につくる、参加する芸術祭」をめざします。

さいたま市に生活する人たちの関心を呼び起こし、市民が創造のプロセスそのものに参加できるプロジェクトを重視します。
具体的には、アーティストが作品を制作する過程で、多くの市民に取材を行ったり、さまざまな素材提供を募ったり、参加型のワークショップを開催したりするほか、市民とアーティストの協働による音楽イベントを開催するなど、市民がさまざまな方法で参加できるプロジェクトを展開し、「共につくる、参加する芸術祭」をめざします。

開催後の継続的な活動の萌芽を生み出します。

参加型のアートプロジェクトや市民プロジェクトの実施などを通じて、トリエンナーレ終了後も市民が自発的、継続的に展開しうる活動の芽をなるべく多く生み出します。

ロゴサイン

さいtまトリエンナーレ2016 ロゴ

デザインコンセプト

広大な関東平野、澄み渡る空の広がり、豊かな水、さいたま市の多様な魅力を彩りにたとえて表現しています。
トリエンナーレのコンセプトである「未来の発見!」につながるよう、無限の広がりを持つ空や水を表す青をベースにしました。
角度を付けた長方形はさいたま市の形を、両端の青の線はさいたま市の河川を想起させます。

デザイナー 中島英樹

デザイナー
中島英樹

1961年、埼玉県生まれ。
1995年、中島デザイン設立。
ニューヨークADC金賞5回、銀賞8回、東京ADC賞、東京ADC原弘賞、ニューヨークTDC賞、東京TDCグランプリ、講談社出版文化賞ブックデザイン賞、その他、世界で受賞多数。
世界各国で個展、グループ展を行い、2009年には、中国の深圳にあるTHE OCT ART & DESIGN GALLERY及び2012年には広島のDAIWA PRESS VIEWING ROOMにて、大規模な個展を開催。
作品は、各国の美術館、博物館等にパーマネントコレクションされている。
AGI(Alliance Graphique Internationale)会員。ニューヨークADC会員。東京ADC会員。東京TDC理事。

キービジュアル

写真家 野口里佳のコメント

20歳になる頃までさいたま市の見沼区で育った私にとって、見沼田んぼは世界の中心のような場所でした。どこに出かけて行っても、必ず帰ってくるところでした。どんなさりげない場所も、そこにいる人にとっては世界の中心のような大切な場所だと思います。いつも見ているのに当たり前すぎて気がつかない、そんな美しさを撮りたいと思います。そしてその写真によって、今いるこの世界の豊かさを感じられる、そんな作品をつくりたいと思っています。
写真家 野口里佳 NOGUCHI Rika

ディレクターコメント

この写真を見れば一目瞭然だが、野口里佳の手にかかると、なんでもない風景が見たこともない神秘性を露わにし、忽然と輝きはじめる。これこそ、私がアートに求める力そのものであり、魔術的と言ってもいい。
ベルリン在住の野口里佳は生まれ育ったさいたまの土地を新たな目で見つめる。これはさいたま市を流れるたくさんの川のうちの一本、芝川だ。川はいつもそこにあり、こんな瞬間があることさえ、多くの人は気づかない。静寂と予感に満ちた一瞬の表情。これに気づくことこそ、私が想う「未来の発見!」に他ならない。私は迷うことなく、さいたまトリエンナーレ2016の精神を最も象徴する一枚として、この写真をキービジュアルとして選んだ。